5日に公開された『アンナ・カレーニナ』を見てきた。ラジオで封切りを聞き、絶対に行きたいと思っていた映画だ。
古いといわれようが、私はロマン大作が好き。特に、終り方がやりきれないロシアものは良い。トルストイさま。どんな仕上がりなのだろうと、わくわくしながら映画館に向かった。
わざとではないけれど、今回はめずらしく新聞・雑誌の批評を事前に読まずに行った。ラジオも聞き流しだったため監督や役者が誰であるのか、その場でわかることになったのだが、、、、
嬉しい発見その1。ヒロインのアンナ役がイギリス女優のキーラ・ナイトレイだった。彼女には以前、飛行機の中で会った。というのは半分ウソで、実際は、成田・パリ便の座席の前の小さな画面で初めて、映画『プライドと偏見』でヒロインを演じていた彼女に会った。とても印象に残っていたこの美しい女優さんが再びヒロインだということで、楽しみが倍増した。
嬉しい発見その2。映画監督が ↑ の『プライドと偏見』(ジェーン・オースティン原作)を手がけたジョー・ライトだった。
さて、映画が始まり、、、
いや~、驚きました。始めに劇場の舞台がいきなり出てきて舞台上でお話の演技が始まり、、、。さすがに最初だけでしょう、と思っていたら、お話すべてがほぼ舞台セットの中(?といっても大幅にはみ出すのだが)だった。
知らないで行っただけに戸惑う。役作りも、故意に、すべてが芝居がかっているし、メイクも衣装も誇張されているし、背景のセットはバッタバタ変わるしで落ち着かない。
おっかしいな、こんなにアバンギャルドな監督だっけ?私は映画を見に来たのよ~、お芝居じゃないのよ~、早く「標準」に戻って~~~!と始めの10分間は祈っていたのだが。。。
慣れる。というか、美しい。衣装も、役者も、振り付けも、セットも。始めは鼻についた人工的な要素も、要は抽象の目を持って見ればストーリーにぴったり合っているし、違和感がすっとなくなるどころか、むしろ心地良い。
アンナの愛人ヴロンスキーも、ジャン・ポール・ゴルチェの香水のCMからそのまま出てきたのでは?とびっくりな風貌だが、それでも、役にぴったり嵌まってくるから、あら不思議。
さてさて、肝心のストーリー。アンナの劇的な運命も、若かりし頃に本で読んだときと変わらず、満足だったのだが、子を産み年数を重ねた今、心に響くところがやはり違うなぁ。
私の長男とたいして歳も変わらなそうなアンナの息子。アンナの、息子に対する愛。母に置き去りにされた子の寂しさ。アンナの、身をちぎられるであろう悲しみ、迷い、葛藤。
妊娠を避けられない当時の女の運命。そして強さ。
愛の形。誠実な愛、忠実な愛、理性の愛、情熱の愛、真の愛、拘束の愛。どれが本物でどれが間違っているのか。もちろん、映画の中には正解もなければ道徳の押し付けもない。
華麗、感動、オリジナル、の3拍子揃って、大満足のひと時でした。