「我々には確信があります。確信がなければ、このような事態には至っていませんよ」
1月23日夜、TF1テレビのニュース番組に登場したルノーのカルロス・ゴーン会長は、同社の幹部3人に対する産業スパイ容疑の「証拠」について問われ、自信満々にインタビュアーに答えていた。
それから一ヶ月余、仏国内中央情報局(DCRI)の調査が進むにつれ、電気自動車(EV)秘密漏えいに関する国際的産業スパイ事件の「証拠探し」は、根も葉もないぬれぎぬ事件の「責任者探し」へと変換しつつある。
3月4日、ルノーのナンバーツー、パトリック・ペラタCOOは、ル・フィガロのインタビューに対し、ルノーが何らかの情報操作manipulationに巻き込まれている可能性を示唆し「スパイ事件が虚構であった場合には、責任を取り辞任も考えている」とまで述べた。
いったい何が起きたのか?
匿名の内部告発の手紙が発生したのが昨年夏。その後数ヶ月間、ルノーは社内のセキュリティー内規に則り、民間の調査会社を使って「独自の」内部調査を行ってきた。その結果、1月初旬、ルノー技術研究所(Technocentre)のEV開発担当の幹部3人を、外国(暗に中国)に企業プログラムを漏らし報酬を得たとして停職処分、のちに解雇した。
幹部の停職処分がメディアにすっぱ抜かれて初めて、ルノーは公けに訴えを起こし、スパイ疑惑の調査はフランスの情報機関であるDCRIに委託された。
その間、疑いを掛けられた幹部3人はそれぞれ弁護士を通し終始無罪を主張。一番若い幹部は「説明なしに突然停職を言い渡された。新聞を見てはじめてどのような疑いを掛けられているのかを知った」と証言している(ル・モンド3月5日付)。
そして、3月に入り、スイスとリヒテンシュタインにあるとされた幹部3人の賄賂受け取り用「隠し口座」は、少なくともスイスには存在しないことがDCRIの捜査により分かった。
1カ月前にはまだ自信満々であったルノー経営陣の威勢の良さは急速に萎えつつある。「疑いが晴れた場合には、幹部3人に職場復帰を申し出るつもりだ(3月4日ル・フィガロ)」と、ペラタCOOは提言。容疑を掛けられた元社員たちが、名誉を回復した場合、その提案を引き受けるかどうかは疑わしい。
何らかの復習目的の偽装工作にしろ、詐欺行為にしろ、幹部3人がシロであると確認されれば、ずさんな内部調査を遂行したルノー首脳陣の首が次々に飛ぶことは確かであろう。
今後の焦点は、日産との「かすがい」であるゴーン会長にまで火の粉が飛ぶか否かということ。また、この騒ぎの創始者である「匿名さん」が誰なのか、いつか分かる日がくるのかどうか。。。
A suivre…