ピルを常用するフランス女性の半数以上が第3世代ピルを服用している。高等保健衛生機構(HAS, Haute Autorité de Santé)が2007年より発していた勧告にも関わらず。
「2007年、すでに、第2世代ピルに対する第3世代ピルのメリットは充分とは言えないので、最初から第3世代ピルを選んで処方することは推奨できなかった」と、HASのジャンリュック・アルソー教授は振り返る。
2011年末、第3世代ピルによる血栓塞栓症や動脈硬化症の発生率が、稀だとはいえ(1万人中2人)第2世代ピルに比べ2倍であるという事実が、デンマークの広範な研究結果により確認されている。
これを受け、HASは第3世代ピルの「医療上の有用性」基準(Service Medical Rendu)を下方修正したのだった。すなわち、現在マリソル・トゥーレーヌ厚生大臣が目標とする「第3世代ピルは例外的にしか処方しない」という方針は、以前から指摘され、医師たちには伝わっていた訳だ。
ではなぜ、HASの勧告は無視され、第3世代ピルがこれほど大量に処方される結果となったのか?
「はっきり言ってしまえば、第3世代ピルを販売する製薬会社のセールストークがうまかったのね」とトゥーレーヌ氏は言う。さらに「2009年に前政権が第3世代ピルの払い戻しを承認しちゃったでしょ。だから余計、医師やピル服用者に警告のメッセージが伝わりにくかったのね」と、ついでに右派の前任者たちを叩く。
HASのアルソー教授は「第3世代というからには第2世代よりも良い、と誤って認識されてしまったのでしょう。医師の中でも特に専門医が『新製品』というふれこみに惹かれてしまった感がある」と分析する。実際、第3世代ピルの処方者は、婦人科医54.2%、一般科医44.7%だ。
アルソー教授はまた「これだけメディアで話題になったのだから、今度こそは、どの医師にもメッセージは伝わったと願いたい」と望む。
一方、現在第3・第4世代ピルを服用している女性たちに向けて、厚生相のトゥーレーヌ氏は「主治医の元に急いで駆けつける必要はありません。次回の診察の際にピルについて相談するとよいでしょう」と、必要以上の不安を取り除く発言をしている。
(Le Nouvel Observateur 1月11日付記事より)
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要は、ことピルに関しては、『第3』だから『第2』のバージョンアップと考えてはダメだ、ということね。iPhone5の方がiPhone4 より高機能、とか、今買うならニンテンドーDSよりは3DS、と同じわけにはいかないと。
前にも挙げたこの記事によれば、そもそも第3世代ピルは、ピル独特の副作用(胸の張り、吐き気、頭痛等)を第2世代ピルより抑えようと開発されたらしい。でも、結果として血栓症のリスクは上がってしまったようだ。
ちなみに、第2と第3/第4世代ピルの違いは主にプロゲステロン(黄体ホルモン)の成分の違いによる。
ともあれ、このピル騒ぎの影響で、1月1日~10日の経口避妊薬の売上げは、第2世代ピルがプラス20%と急増したのに対し、第3世代ピルは6%減少した(nouvelobs.com)。
では、なぜ、いっそのこと、第3世代ピルを完全に販売禁止にしないのだろう?francetvinfo.fr のこの記事によれば、理由のひとつとしてトゥーレーヌ厚生大臣は、第2世代ピルが全く体に合わない女性に選択肢を残しておきたいからと説明。さらに「第2世代ピルを優先させたい気持ちはあるが、体質によりケースバイケースで決めていくことが何より重要」と言う。
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