メゾン・ディオールのデザイナー、ジョン・ガリアーノJohn Gallianoがここ数日ファッション界のみならず新聞の社会面を賑わしている。
先週末、パリのマレ地区のカフェ「La Perle」のテラスでガリアーノ氏と隣り合ったカップルがユダヤ人差別および人種差別発言を氏から受けたとして警察に被害届を出した。メゾン・ディオールは即刻ガリアーノ氏に職務停止処分を言い渡した。
そして今朝、新たな被害届が、ある女性により同じ3区の警察署に出された。内容はやはり反ユダヤ発言により誹謗中傷を受けたというもの。事は昨年10月にさかのぼるとのこと。
いったい何が起きたのか?ふたつの事件に共通するのは、同じカフェのテラス、ユダヤ人差別発言および脅し、そしてガリアーノ氏の泥酔状態である。
また、どうやら氏はこのような行動の常習犯であったようで、カフェの常連客も氏が他の客に絡むのを面白半分で応援するきらいがあったとか。(実際のところは定かではないが、lemonde.frのコメント欄に事情通らしき人がコメントしている)
ガリアーノ氏は反ユダヤ?女性嫌い?
パリのマレ地区といえば、ユダヤ人街およびホモセクシャルの街として有名な所。しかもカフェのテラスという路上で今までこのような誹謗中傷が繰り返されていたというのなら、誰も本気にせず名物化していたか、有名デザイナーとして大いに許容されていたかのどちらかではないか。
伝えられている氏の発言の内容は強烈だ。(女性に向かって)「ユダヤ人の汚いツラ下げやがって、お前なんか今頃死んでいるべきだ」(一緒にいたアジア系男性に向かって)「このアジア野郎、殺してやる」。
さらにさらに、時期的にはこの2件の出来事の間に取られたという、ガリアーノ氏の「絡む」場面のビデオがThe Sunのサイトに載った。例のカフェのテラスで,
隣り合わせた女性ばかりのお客に対し「俺はヒトラーが好きだ」「お前らみたいなのは死んでいるべきだ、お前らの母親や先祖はみなガス室行きのはずだ」と、へべれけながらも明瞭に聞こえる。当の女性たちは「信じられない」といった様子。
この女性たちが実際にユダヤ人というわけではない。このビデオを取り上げているル・モンド系のブログBig Browzerの記事の結論によれば、女性客の「あなたの問題は何?」という問いかけに対し「お前だよ、醜すぎる!」と氏が答えていることから、ガリアーノ氏はヒトラー好き以上に「醜さ」に恐怖観念を抱いているようだ。確かにそんな気がする。
天才デザイナーの美の観念が災いしているのか。お酒の力は時として本当に恐ろしい。
Monday, February 28, 2011
Sunday, February 27, 2011
サルコジ大統領TV演説、アリヨマリ外相更迭
週末の間中、アリヨマリ外相(MAM)の追放が確実との情報が飛び交う中、日曜夜8時よりサルコジ大統領の全国民に向けたラジオ・テレビ演説が始まった。この演説中にMAMの後任者を含めた改造内閣が公式発表されると誰もが知っていたが、演説の目的は、表向きには「世界情勢と移民問題について」と銘打たれていた。
個人的には、しばらく大統領演説なるものを意図的に見ていない。正直、このムッシュに関しては飽和状態で、彼の話し振りにますます空回り的なものを覚えているから。
でも、今晩は、演説の表向きのテーマと、内閣改造をどう発表するかに興味をそそられ、運よく子どもたちもベッドに送り込めたので、ワイン片手にテレビの前に陣取った。
ラ・マルセイエーズ(国家)のオープニングに引き続き、国旗と書棚をバックに大統領の姿が現れた。いつも落ち着きなく動き回る手や腕を写さないための胸から上のフレーミングか?などと余計なことに気づく。
さて、本題。予想通り、年末より沸騰中の地中海南岸の状況からスピーチは始まり、この喜ばしい民衆の自由への目覚めによりヨーロッパへと移民が大量に流入してはならない、と続いた。そして、「このような新しい世界情勢にきちんと対応するべく、外務大臣としての経験もある有能なアラン・ジュぺAlain Juppé防衛相を新たに外務大臣に任命する」ときた。
そして、驚いたことに、MAMに関しては、その名前にすら触れなかった。MAMの相次ぐ失態が内閣改造につながったという、言及しづらい事柄に対し、本人はうまくかわしたつもりであろうが、なんとも情けないスピーチの持って行き方。
この内閣改造のついでに、アラブ人に対する差別発言で有罪判決を受けているブリス・オルトフBrice Hortefeux 内務大臣も内閣から外れ、サルコジ大統領の特別顧問のポストに移った。
その他、少数の大臣入れ替えを発表し、座礁している地中海連合Union pour la méditerranée*の再生に言及し、どことなくバツの悪さを隠しきれないまま、演説は数分でサクサクと終了したのだった。
*今は遁走したベンアリ&ムバラク元大統領たちを2本柱として、サルコジ大統領が2008年に設立した、欧州と地中海沿岸の国々を集めた連盟。
個人的には、しばらく大統領演説なるものを意図的に見ていない。正直、このムッシュに関しては飽和状態で、彼の話し振りにますます空回り的なものを覚えているから。
でも、今晩は、演説の表向きのテーマと、内閣改造をどう発表するかに興味をそそられ、運よく子どもたちもベッドに送り込めたので、ワイン片手にテレビの前に陣取った。
ラ・マルセイエーズ(国家)のオープニングに引き続き、国旗と書棚をバックに大統領の姿が現れた。いつも落ち着きなく動き回る手や腕を写さないための胸から上のフレーミングか?などと余計なことに気づく。
さて、本題。予想通り、年末より沸騰中の地中海南岸の状況からスピーチは始まり、この喜ばしい民衆の自由への目覚めによりヨーロッパへと移民が大量に流入してはならない、と続いた。そして、「このような新しい世界情勢にきちんと対応するべく、外務大臣としての経験もある有能なアラン・ジュぺAlain Juppé防衛相を新たに外務大臣に任命する」ときた。
そして、驚いたことに、MAMに関しては、その名前にすら触れなかった。MAMの相次ぐ失態が内閣改造につながったという、言及しづらい事柄に対し、本人はうまくかわしたつもりであろうが、なんとも情けないスピーチの持って行き方。
この内閣改造のついでに、アラブ人に対する差別発言で有罪判決を受けているブリス・オルトフBrice Hortefeux 内務大臣も内閣から外れ、サルコジ大統領の特別顧問のポストに移った。
その他、少数の大臣入れ替えを発表し、座礁している地中海連合Union pour la méditerranée*の再生に言及し、どことなくバツの悪さを隠しきれないまま、演説は数分でサクサクと終了したのだった。
*今は遁走したベンアリ&ムバラク元大統領たちを2本柱として、サルコジ大統領が2008年に設立した、欧州と地中海沿岸の国々を集めた連盟。
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Friday, February 25, 2011
フランス外交ぬかるみにはまる
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中東情勢もますます緊迫化し、各国の外交手段が試される時だというのに、フランス外交は内紛状態。サルコジ政権にとっては、一年後に再選を狙うためにはここが正念場だというのに、外交部門ではエンジンの内部故障が相次ぎなかなか前に進めない状態。
おととい、groupe Marly なる匿名の外交官グループがル・モンド紙にサルコジ政権の外交政策を批判する論説を出したとこのブログで取り上げたが、これに呼応する記事が、昨日、今度はル・フィガロ紙に掲載された。
「匿名の外交官たちへ」‘Réponse aux diplomates anonymes’と題されたこの記事だが、これまた ‘Le Rostand’ と名乗るやはり匿名の外交官グループにより「署名」されている。
皮肉もふんだんに用いたその内容は、groupe Marlyのメンバーを昔の外交に固執した時代遅れの自信過剰者たち扱いした上で、国の経済的崩壊回避、EU議長国の遂行、グルジアの独立を保護などなど、新しい「行動派」政策による具体的な「成果」を挙げながらサルコジ氏のこれまでの外交政策を強力に擁護している。さらに、匿名のMarly集団の影にPS(仏社会党)の存在を匂わせている。
同じ日、サルコジ大統領顧問のアンリ・ゲノHenri Guaino氏が、groupe Marly の主張を一笑に付した上で、この論説は大統領選に向けての「政治キャンペーンのビラ」に過ぎないとラジオで反論。
そして、今日、アリヨマリ外相が、ル・モンド紙上に同じような趣旨の反論を載せ、groupe Marly を「名乗りもしない意気地なし」呼ばわりしながらサルコジ氏の外交政策を賛美している。
そのアリヨマリ氏だが、皮肉なことに、いよいよサルコジ氏に外務大臣を辞任するよう諭されたと各メディアが発表。遅くても週明けの月曜日には新たな大臣が任命される見通しとか。そして、ル・パリジャンLe Parisien の情報によれば、アリヨマリ外相はサルコジ大統領に辞任の意図はないと返答したとのこと。どうなることやら。
ちなみに、アリヨマリ外相は、チュニジア政権崩壊の直前に政権側にデモ隊を取り締まる協力を申し出てひんしゅくを買ったほか、元ベンアリ政権との緊密な関係を非難されている。
中東情勢もますます緊迫化し、各国の外交手段が試される時だというのに、フランス外交は内紛状態。サルコジ政権にとっては、一年後に再選を狙うためにはここが正念場だというのに、外交部門ではエンジンの内部故障が相次ぎなかなか前に進めない状態。
おととい、groupe Marly なる匿名の外交官グループがル・モンド紙にサルコジ政権の外交政策を批判する論説を出したとこのブログで取り上げたが、これに呼応する記事が、昨日、今度はル・フィガロ紙に掲載された。
「匿名の外交官たちへ」‘Réponse aux diplomates anonymes’と題されたこの記事だが、これまた ‘Le Rostand’ と名乗るやはり匿名の外交官グループにより「署名」されている。
皮肉もふんだんに用いたその内容は、groupe Marlyのメンバーを昔の外交に固執した時代遅れの自信過剰者たち扱いした上で、国の経済的崩壊回避、EU議長国の遂行、グルジアの独立を保護などなど、新しい「行動派」政策による具体的な「成果」を挙げながらサルコジ氏のこれまでの外交政策を強力に擁護している。さらに、匿名のMarly集団の影にPS(仏社会党)の存在を匂わせている。
同じ日、サルコジ大統領顧問のアンリ・ゲノHenri Guaino氏が、groupe Marly の主張を一笑に付した上で、この論説は大統領選に向けての「政治キャンペーンのビラ」に過ぎないとラジオで反論。
そして、今日、アリヨマリ外相が、ル・モンド紙上に同じような趣旨の反論を載せ、groupe Marly を「名乗りもしない意気地なし」呼ばわりしながらサルコジ氏の外交政策を賛美している。
そのアリヨマリ氏だが、皮肉なことに、いよいよサルコジ氏に外務大臣を辞任するよう諭されたと各メディアが発表。遅くても週明けの月曜日には新たな大臣が任命される見通しとか。そして、ル・パリジャンLe Parisien の情報によれば、アリヨマリ外相はサルコジ大統領に辞任の意図はないと返答したとのこと。どうなることやら。
ちなみに、アリヨマリ外相は、チュニジア政権崩壊の直前に政権側にデモ隊を取り締まる協力を申し出てひんしゅくを買ったほか、元ベンアリ政権との緊密な関係を非難されている。
リビア、軍事介入か否か、そこが問題だ
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リビア入りすることが出来たジャーナリストが増えたとはいえ、まだまだ不透明な情勢のリビア。ただ、①体制に抗議する市民たちに対する武力弾圧が激しくなっていることと②リビア東部だけではなく西部の首都トリポリ付近の町や村も次々と反体制派により解放され、カダフィ大佐はますます孤立していることだけは確かな様子。
フランスの人権大使のフランソワ・ジムレー氏が語るように、問題は「もはやカダフィ氏が退陣するか否かではなく、いつ去るのかという」点であり、国際社会の関心事は「人道に対する罪が行われていると推察される」という点だ(ロイターのインタビュー2月24日)。
デモ隊に対する容赦ない武力行使を野放しにできるのか?無防備なリビア市民を世界中が見殺しにするのか?国連軍やNATOの介入は必要ではないのか?…
もっともな疑問が頭をよぎる。
しかし、市民を救うという目的とはいえ、中長期的に考えた場合、軍事介入は果たして効果的であろうか?
この疑問に対し、Le Monde Diplomatique の近東専門家 Alain Gresh 氏は昨日Faut-il intervenir militairement en Libye ? (リビアへの軍事介入は必要か)と題するブログ記事を出した。
即刻軍事介入派の意見に対しGresh氏は「列強の軍事介入行為はまさにカダフィやアルカイーダなどのイスラム主義者たちの思う壺だ。そら、外国人が国を乗っ取りに来た!そら、十字軍が攻めて来た!と逆手に利用されかねない」という反論を取り上げ、自らも「イスラエルのガザ攻撃やNATO軍のアフガニスタン爆撃時には誰も止めようとはしなかった」「イラクへのアメリカ軍による介入の結果は、8年後の今、とても成功とは言い難い」と外部からの軍事介入には懐疑的だ。
では、どうすればよいのか?
Gresh氏:まず、国連指揮下の軍事介入は必ずしも効果的でないことを認めるべき。チュニジア・エジプトのケースでは外部干渉なしで市民運動が勝った。また、「国家主権souveraineté nationale」に係わる問題で、今回初めてメンバー国を禁止したアラブ連盟にも注目したい。このような断固とした態度はリビア国内の派閥の亀裂を強めて内部からの崩壊を加速する。
いずれにしても、リビアの石油資源やリビアのアフリカ移民抑止力を称えて、独裁政権と知りながら、今までさんざんリビア政権を武器輸出など軍力的にも援助してきたヨーロッパを始めとする列強が、この状況下で介入することは好ましくない。
私もGreshさんの聡明な分析に賛成ではあるが、その間、自由の「代価」として毎日失われている尊い命たちを見殺しにしているようで何ともやりきれない…。
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リビア入りすることが出来たジャーナリストが増えたとはいえ、まだまだ不透明な情勢のリビア。ただ、①体制に抗議する市民たちに対する武力弾圧が激しくなっていることと②リビア東部だけではなく西部の首都トリポリ付近の町や村も次々と反体制派により解放され、カダフィ大佐はますます孤立していることだけは確かな様子。
フランスの人権大使のフランソワ・ジムレー氏が語るように、問題は「もはやカダフィ氏が退陣するか否かではなく、いつ去るのかという」点であり、国際社会の関心事は「人道に対する罪が行われていると推察される」という点だ(ロイターのインタビュー2月24日)。
デモ隊に対する容赦ない武力行使を野放しにできるのか?無防備なリビア市民を世界中が見殺しにするのか?国連軍やNATOの介入は必要ではないのか?…
もっともな疑問が頭をよぎる。
しかし、市民を救うという目的とはいえ、中長期的に考えた場合、軍事介入は果たして効果的であろうか?
この疑問に対し、Le Monde Diplomatique の近東専門家 Alain Gresh 氏は昨日Faut-il intervenir militairement en Libye ? (リビアへの軍事介入は必要か)と題するブログ記事を出した。
即刻軍事介入派の意見に対しGresh氏は「列強の軍事介入行為はまさにカダフィやアルカイーダなどのイスラム主義者たちの思う壺だ。そら、外国人が国を乗っ取りに来た!そら、十字軍が攻めて来た!と逆手に利用されかねない」という反論を取り上げ、自らも「イスラエルのガザ攻撃やNATO軍のアフガニスタン爆撃時には誰も止めようとはしなかった」「イラクへのアメリカ軍による介入の結果は、8年後の今、とても成功とは言い難い」と外部からの軍事介入には懐疑的だ。
では、どうすればよいのか?
Gresh氏:まず、国連指揮下の軍事介入は必ずしも効果的でないことを認めるべき。チュニジア・エジプトのケースでは外部干渉なしで市民運動が勝った。また、「国家主権souveraineté nationale」に係わる問題で、今回初めてメンバー国を禁止したアラブ連盟にも注目したい。このような断固とした態度はリビア国内の派閥の亀裂を強めて内部からの崩壊を加速する。
いずれにしても、リビアの石油資源やリビアのアフリカ移民抑止力を称えて、独裁政権と知りながら、今までさんざんリビア政権を武器輸出など軍力的にも援助してきたヨーロッパを始めとする列強が、この状況下で介入することは好ましくない。
私もGreshさんの聡明な分析に賛成ではあるが、その間、自由の「代価」として毎日失われている尊い命たちを見殺しにしているようで何ともやりきれない…。
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Wednesday, February 23, 2011
リビア、引き続き…
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おととい、ベネズエラへ亡命か?との噂も流れ、「カダフィ大佐が退散中…」と書いたが、やはり一筋縄ではいかない。
カダフィ大佐はちゃんとリビアの首都トリポリにいて、昨日の夕方はテレビ中継にて国民に呼びかけた。晩年はますますエキセントリックな人物として知られていたけれど、語る姿はやはり尋常ではない。
この様子を見る限り、ベンアリやムバラク前大統領たちのように亡命や引退など考えられない。国が滅びようと最後まで戦いぬく意気込み。背筋が寒くなる。
そして、姿はもとより仰天するのがスピーチの内容。「リビアの民よ、反乱分子と戦え、今夜より戦闘機材を準備する」などと国民同士の内戦を促している。昨日の朝からの情報によれば、すでにあちらこちらで戦闘機による空爆や地上戦による被害者が続出している。
しかし、新聞記者が締め出されているので、情報が乏しく、殺戮の度合いが懸念される。しかも、カダフィに雇われた多数のアフリカ人傭兵の仕業により死者が続出しているという。今日になってようやく、各国のジャーナリストたちがチュニジアやエジプト国境から「非合法に」進入できた模様。情報が少しずつ増えてきた。ル・モンドのジャーナリストも潜入できた様子。
明らかに市民の虐殺が懸念されるというのに、国連安保理は昨日一日中話し合った結果「暴力行為を非難」する声明を発するにとどまり、非常事態だと言うのに国連軍介入などの具体案はなし。やはり、中国、ロシアの尻込みか。
一方で、世界各国の外交官をはじめ、陣地がえを発表するリビア高官は後を絶たない。遅かれ早かれカダフィ体制の行く末は明らかなだと思われるのに、毒を食らわば皿まで?
それともまだ体勢を立て直せると思っているのだろうか。今日、副外相がリビア東部のデルナにアルカイーダのメンバーがイスラム主義の「首長国」を設立したと発表。お決まりの「イスラム主義」を持ち出した脅し…。
そんな中、イランの反応が興味深い。2年前に自国の抗議運動を武力で鎮圧したアフマディネジャド大統領自身が、本日テレビで、リビアの国民に対する武力行使を声高に糾弾した。チュニジア、エジプトの反体制運動の際にも「民衆はイスラム国家を望んで戦っている」などと目的を都合のいいようにすり替え、蜂起を支援するメッセージを発したイラン首脳陣は、内心はかなりビビッているに違いない。
いずれにしても、死者の数もソースにより300人(政府発表)から1万人(アルアラビアTV)と幅があり、まだまだリビアに関する情報は錯綜している。明日には少し明瞭になってくるだろうか。
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おととい、ベネズエラへ亡命か?との噂も流れ、「カダフィ大佐が退散中…」と書いたが、やはり一筋縄ではいかない。
カダフィ大佐はちゃんとリビアの首都トリポリにいて、昨日の夕方はテレビ中継にて国民に呼びかけた。晩年はますますエキセントリックな人物として知られていたけれど、語る姿はやはり尋常ではない。
この様子を見る限り、ベンアリやムバラク前大統領たちのように亡命や引退など考えられない。国が滅びようと最後まで戦いぬく意気込み。背筋が寒くなる。
そして、姿はもとより仰天するのがスピーチの内容。「リビアの民よ、反乱分子と戦え、今夜より戦闘機材を準備する」などと国民同士の内戦を促している。昨日の朝からの情報によれば、すでにあちらこちらで戦闘機による空爆や地上戦による被害者が続出している。
しかし、新聞記者が締め出されているので、情報が乏しく、殺戮の度合いが懸念される。しかも、カダフィに雇われた多数のアフリカ人傭兵の仕業により死者が続出しているという。今日になってようやく、各国のジャーナリストたちがチュニジアやエジプト国境から「非合法に」進入できた模様。情報が少しずつ増えてきた。ル・モンドのジャーナリストも潜入できた様子。
明らかに市民の虐殺が懸念されるというのに、国連安保理は昨日一日中話し合った結果「暴力行為を非難」する声明を発するにとどまり、非常事態だと言うのに国連軍介入などの具体案はなし。やはり、中国、ロシアの尻込みか。
一方で、世界各国の外交官をはじめ、陣地がえを発表するリビア高官は後を絶たない。遅かれ早かれカダフィ体制の行く末は明らかなだと思われるのに、毒を食らわば皿まで?
それともまだ体勢を立て直せると思っているのだろうか。今日、副外相がリビア東部のデルナにアルカイーダのメンバーがイスラム主義の「首長国」を設立したと発表。お決まりの「イスラム主義」を持ち出した脅し…。
そんな中、イランの反応が興味深い。2年前に自国の抗議運動を武力で鎮圧したアフマディネジャド大統領自身が、本日テレビで、リビアの国民に対する武力行使を声高に糾弾した。チュニジア、エジプトの反体制運動の際にも「民衆はイスラム国家を望んで戦っている」などと目的を都合のいいようにすり替え、蜂起を支援するメッセージを発したイラン首脳陣は、内心はかなりビビッているに違いない。
いずれにしても、死者の数もソースにより300人(政府発表)から1万人(アルアラビアTV)と幅があり、まだまだリビアに関する情報は錯綜している。明日には少し明瞭になってくるだろうか。
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Tuesday, February 22, 2011
グループ・マルリー(フランス外交)
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2月23日付けLe Monde紙の意見欄に、匿名の外交官グループ(le groupe Marly)が論説を載せた (題名"On ne s’improvise pas diplomate")。'Marly' は発起メンバーが当初集まったパリのカフェの名前。
このグループは、現大統領は総じて行政機関を蔑視し、自らの政策ミスの責任を転嫁する傾向にあると、痛烈にサルコジ政権の外交政策を批判している。その裏付けとして、4つの誤りを挙げている。
①衝動性。⇒地中海連合(Union pour la Mediterranee)の座礁。その目的と手段の変更をうながした外務省の忠告を無視し即席に設立された。
注)チュニジアのベンアリ前大統領とエジプトのムバラク前大統領を主な柱とした、サルコジ大統領発案の連合体。
②アマチュア性。⇒コペンハーゲン環境会議の準備を環境省に任せたために、フランスそして欧州の弱さが露呈し、会議の失敗へとつながった。
③メディア受けを狙う。⇒今メキシコとの間に起きている外交摩擦は、本来ならば穏便に処置されるべき案件が表沙汰になったことが原因。
注)メキシコで誘拐補助罪で60年の禁固刑を受けた仏人女性Florence Cassez をめぐる、首脳陣を巻き込んだ司法論争。
④一貫性の欠如。⇒わが国の中東政策は意味不明で、シリアの思う壺となっている。同時に、フランス語圏アフリカ政策が物語るように、明らかな優先事項が実行されていない。
グループは、フランスの外交官もアメリカの同僚たちに劣らない真面目な仕事をしているにも係わらず、その意見が政策に反映されていないことを指摘している。
この論説は、もちろん、アリヨマリ外相の対チュニジア外交における相次ぐ失態に代表される、フランス国そのもののイメージ低下を嘆いたもの。
また、題名の "On ne s’improvise pas diplomate"(付け焼刃で外交官は務まらない)は、明らかに、ここ3日ほど話題になっている「サルコ・ボーイ」、チュニジアに就任ほやほやの若手ボリス・ボワイヨンBoris Boillon大使のお粗末な仕事ぶりを揶揄したものだろう。
(先週の木曜日、就任の挨拶に招待したチュニジアのジャーナリストたち対し、高慢で冷静さを欠いた態度を示したビデオが出回っている。2日後に仏領事館前で大使追放を求めるデモが起き、翌日に国営テレビ放送にで大使はチュニジア国民に対し謝罪した)
それにしても、司法官たちに引き続き、本来「自制義務(devoir de reserve)」下に置かれた外交官などの官吏たちまでをも敵に回して、サルコジ政権末期はいよいよ混迷してきた模様…。
ついでに、Groupe Marlyは、2008年に一部の軍指揮官がサルコジ政策を批判する論説をGroupe Surcoufの仮名で発表したことにちなんでいる。
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2月23日付けLe Monde紙の意見欄に、匿名の外交官グループ(le groupe Marly)が論説を載せた (題名"On ne s’improvise pas diplomate")。'Marly' は発起メンバーが当初集まったパリのカフェの名前。
このグループは、現大統領は総じて行政機関を蔑視し、自らの政策ミスの責任を転嫁する傾向にあると、痛烈にサルコジ政権の外交政策を批判している。その裏付けとして、4つの誤りを挙げている。
①衝動性。⇒地中海連合(Union pour la Mediterranee)の座礁。その目的と手段の変更をうながした外務省の忠告を無視し即席に設立された。
注)チュニジアのベンアリ前大統領とエジプトのムバラク前大統領を主な柱とした、サルコジ大統領発案の連合体。
②アマチュア性。⇒コペンハーゲン環境会議の準備を環境省に任せたために、フランスそして欧州の弱さが露呈し、会議の失敗へとつながった。
③メディア受けを狙う。⇒今メキシコとの間に起きている外交摩擦は、本来ならば穏便に処置されるべき案件が表沙汰になったことが原因。
注)メキシコで誘拐補助罪で60年の禁固刑を受けた仏人女性Florence Cassez をめぐる、首脳陣を巻き込んだ司法論争。
④一貫性の欠如。⇒わが国の中東政策は意味不明で、シリアの思う壺となっている。同時に、フランス語圏アフリカ政策が物語るように、明らかな優先事項が実行されていない。
グループは、フランスの外交官もアメリカの同僚たちに劣らない真面目な仕事をしているにも係わらず、その意見が政策に反映されていないことを指摘している。
この論説は、もちろん、アリヨマリ外相の対チュニジア外交における相次ぐ失態に代表される、フランス国そのもののイメージ低下を嘆いたもの。
また、題名の "On ne s’improvise pas diplomate"(付け焼刃で外交官は務まらない)は、明らかに、ここ3日ほど話題になっている「サルコ・ボーイ」、チュニジアに就任ほやほやの若手ボリス・ボワイヨンBoris Boillon大使のお粗末な仕事ぶりを揶揄したものだろう。
(先週の木曜日、就任の挨拶に招待したチュニジアのジャーナリストたち対し、高慢で冷静さを欠いた態度を示したビデオが出回っている。2日後に仏領事館前で大使追放を求めるデモが起き、翌日に国営テレビ放送にで大使はチュニジア国民に対し謝罪した)
それにしても、司法官たちに引き続き、本来「自制義務(devoir de reserve)」下に置かれた外交官などの官吏たちまでをも敵に回して、サルコジ政権末期はいよいよ混迷してきた模様…。
ついでに、Groupe Marlyは、2008年に一部の軍指揮官がサルコジ政策を批判する論説をGroupe Surcoufの仮名で発表したことにちなんでいる。
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Monday, February 21, 2011
ついにリビア
リビアの最高指導者カダフィ大佐が退散中…。リビアはさすがにもう少し持つのではと思っていたが、地理的にも先に独裁者追放を果たしたチュニジアとエジプトにはさまれて、民衆運動の勢いに抵抗できなかったか…。
帰宅してからLemonde.frのライブで様子を追っているけれど、どんなに頑強なシステムを作り上げ、40年間その上にあぐらをかいていても、風向きが変わり崩壊するときには、トランプのタワーが崩れるようにあっけないものだと実感する。
国連の派遣官僚、戦闘機によるデモ隊への攻撃命令を拒否してマルタに避難した軍の高官など、今まで政権側にいた人々が次々に陣地がえしてトップを見放すために内部から脆くなるのだと、ライブで経過を追っているとよくわかる。人間なんて、本来は現金なものだ…。
ところで、チュニジア前ファーストレディーのレイラ夫人、瀕死の夫をサウジアラビアにおいてリビアに亡命中だったはずだけど、今頃またどこかへ脱出中だろうか。
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帰宅してからLemonde.frのライブで様子を追っているけれど、どんなに頑強なシステムを作り上げ、40年間その上にあぐらをかいていても、風向きが変わり崩壊するときには、トランプのタワーが崩れるようにあっけないものだと実感する。
国連の派遣官僚、戦闘機によるデモ隊への攻撃命令を拒否してマルタに避難した軍の高官など、今まで政権側にいた人々が次々に陣地がえしてトップを見放すために内部から脆くなるのだと、ライブで経過を追っているとよくわかる。人間なんて、本来は現金なものだ…。
ところで、チュニジア前ファーストレディーのレイラ夫人、瀕死の夫をサウジアラビアにおいてリビアに亡命中だったはずだけど、今頃またどこかへ脱出中だろうか。
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Sunday, February 20, 2011
民衆蜂起と腹痛と
十日ほど前から胃とお腹がしくしくと痛い。私にしてはめずらしい。
乙女のころから慢性的に胃痛に悩まされ、コーヒーも飲めず、バッグにはタケダ漢方胃腸薬を常備していた私だけれど、十ウン年前に日本を離れてパリに移り住むと同時にパタリと胃痛がなくなった。コーヒーも飲めるようになった。
そこで思い当たるのがアラブ諸国や中東で起きている民衆蜂起や反体制運動。なんとなく、これのような気がする。年末より新聞、ラジオ、TVニュースチャンネルでチュニジア情勢を革命に至るまで追ってから、ムバラク大統領退散に至るエジプト情勢、そしてここ数日の、リビアやイランなどの超強健独裁体制をも揺るがしている民衆の底力に、正直釘付けだ。
そして、疲れる。この地域の人たちの生活と直接かかわりはないけれど、すごく消耗する。マグレブや中東地域の沸騰によって引き起こされている、地殻変動にも似たパラダイムの変換に立ち会っている感覚。日本人としてヨーロッパにいても、この動きに否応なく巻き込まれているため、めまいに似た感覚を覚える。
中東事情に絡むヨーロッパやアメリカの思惑と対処、外交上の争点となりそうなポイントを、わかる範囲で考えてみると、その緊迫感に圧倒されて頭まで痛い。
こうオットに話すと「あー、わかるわかる。実はぼくも同じだよ。意外と疲れるもんだね」と答えた。
二日前からオットをパリに残し義実家に来ている。義母に、胃が痛いこと、原因として思い当たることを説明する。パラダイムが、地殻変動が、目に見えない気運の流れが、、、と抽象的な事柄を伝えようとする。義母は一生懸命耳を傾けてくれるが、途中で「ごめん、Je ne te suis plus… (話に)ついてけてない…」と申し訳なさそうに言った。
そこで、終いには私も「えっとね、Xファイルみたいなものなの」とつぶやいたが相手の目はテン。今宵は、義理娘がいつもよりもさらに宇宙人に見えたことだろう。
乙女のころから慢性的に胃痛に悩まされ、コーヒーも飲めず、バッグにはタケダ漢方胃腸薬を常備していた私だけれど、十ウン年前に日本を離れてパリに移り住むと同時にパタリと胃痛がなくなった。コーヒーも飲めるようになった。
そこで思い当たるのがアラブ諸国や中東で起きている民衆蜂起や反体制運動。なんとなく、これのような気がする。年末より新聞、ラジオ、TVニュースチャンネルでチュニジア情勢を革命に至るまで追ってから、ムバラク大統領退散に至るエジプト情勢、そしてここ数日の、リビアやイランなどの超強健独裁体制をも揺るがしている民衆の底力に、正直釘付けだ。
そして、疲れる。この地域の人たちの生活と直接かかわりはないけれど、すごく消耗する。マグレブや中東地域の沸騰によって引き起こされている、地殻変動にも似たパラダイムの変換に立ち会っている感覚。日本人としてヨーロッパにいても、この動きに否応なく巻き込まれているため、めまいに似た感覚を覚える。
中東事情に絡むヨーロッパやアメリカの思惑と対処、外交上の争点となりそうなポイントを、わかる範囲で考えてみると、その緊迫感に圧倒されて頭まで痛い。
こうオットに話すと「あー、わかるわかる。実はぼくも同じだよ。意外と疲れるもんだね」と答えた。
二日前からオットをパリに残し義実家に来ている。義母に、胃が痛いこと、原因として思い当たることを説明する。パラダイムが、地殻変動が、目に見えない気運の流れが、、、と抽象的な事柄を伝えようとする。義母は一生懸命耳を傾けてくれるが、途中で「ごめん、Je ne te suis plus… (話に)ついてけてない…」と申し訳なさそうに言った。
そこで、終いには私も「えっとね、Xファイルみたいなものなの」とつぶやいたが相手の目はテン。今宵は、義理娘がいつもよりもさらに宇宙人に見えたことだろう。
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