~日々の気になるメディアトピックを気ままにコメント分析~

Sunday, January 27, 2013

仏メディアに忘れ去られたアルジェリア人質事件


【仏メディア 後編】(前編へ)

24日午後、シャルル・ド・ゴール空港で、メキシコで釈放されたフロランス・カセさんを乗せた飛行機が着陸するのを取材陣が待つあいだ、iTele のレポーターが一人「実は今朝、この空港に、もうひとつの帰還がありました。アルジェリア人質事件で唯一殺害されたフランス人人質のヤン・デジューさんの棺が、同じ滑走路に降り立ったのです」

無名のレポーターよ。よく言った。彼の一言は、フロランス歓迎のヒステリックな報道に一瞬にしてかき消されてしまったが、私の耳にはちゃんと残ったよ。

フロランス帰国の過熱報道が、数年にわたる人権侵害からの解放を祝う喜びからくるものであるならば、テロリストの人質になりあっけなく殺されてしまうという、同じ一国民に対する明白な人権侵害はどう扱うのか?

数少ない記事のひとつによれば、棺の出迎えにひそやかに出席したのは無名のエレーヌ・コンウェイ在外フランス人担当大臣(外務省付きの副ポスト)。記事の写真を見ると一応赤じゅうたんは敷かれているので国としての公式な出迎えだというのに、同じ日の午前と午後でこの待遇の差は何?

たとえ遺族が報道は控え目にと希望を出していたと仮定しても、ジャーナリストとして一応は言及するのが勤めだし、死者への敬いってモンじゃないの?記事によれば、空港で棺が迎えられた場所も、数時間後にフロランスがファビウス外相を従えて記者会見のフラッシュを浴びた、同じレセプション・ルームだということだし、リマインドする機会はいくらでもあったのでは。

フロランスと同じ日に、自国の人質の亡骸も帰ってきたと気付いた仏国民はどれだけいるのだろう?

やっぱり、マリ軍事介入の正当なイメージを維持するため、士気を損なわないために、今現在フランスでは「あの」人質事件に、メディア上なるべく触れさせたくないのね、と勘ぐらざるを得ない。

もちろん、視聴率的には味気ない棺おけの映像よりは美女の涙や笑顔の方が売れるので、すべてが政治がらみでないことは承知。ただ、フランスのメディアは、独立を謳ってはいるけど、メディア企業オーナーが財界の大物であることも多く、サルコジ政権下では仏国営テレビの責任者を大統領が直接任命できるように法を変えちゃったりして、往々にして報道を自粛したりする悪い癖もある。

ショックだったのは21日月曜日、France2(国営放送)20時のTVニュース。アルジェリア軍の強行突破から2日目のこの日は、午後にアルジェリアのセラル首相が制圧作戦終了後初の記者会見を行い、外国人人質の犠牲者の数が当初伝えられていた23人から37人に増えて行方不明者もまだいる、と発表した日だった。

かなり重要な話題だと思われたのに、なんと、この記者会見の数時間後に放送されたプライムタイムの全国ニュース番組で見事に無視されてしまった。

最初の10-15分は延々とフランスに降りしきった大雪の話題。わかったよ、いつまでやってんだろ、って思ったら次はマリでのフランス軍の活躍のニュース。北部のある村からイスラミストたちを追い出すことに成功、村人たちに歓迎される、フランス軍立派!という内容。おまけに、コンピュータグラフィックでマリでの北部解放戦線がぐんぐん上昇していく様子が映し出され、戦中プロパガンダか?とツッコミを入れたくなる。

その他、オバマ大統領就任セレモニーの話題もあったかなー、よく覚えてないけど、とにかく、アルジェリア人質事件にはついに触れられることは無かった。。。

なんか、あきれるだけでなく、腹立たしいんですけど。
これでいいのか、フランス・メディア?

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