~日々の気になるメディアトピックを気ままにコメント分析~

Monday, December 31, 2012

ストラスブールで聖女に出会った


年末年始を過ごしているストラスブール。夜、子どもを預けての久々のレストラン。

趣のある上階のホールで楽しく食事を取っていると、トコトコ、トコトコ、小さな足音が行ったりきたり。よくみると、ホール係のお姉さんの後について、7歳くらいの女の子がお皿をさげたり、デザートのみならずコーヒーまでをもこぼさないように慎重に慎重に運んでいる。

使命がひとつ終わると「次は、次は?」とお姉さんの指示を仰ぎ、「じゃ、これね」と任されると誇らしげに任務に就く。

25日は過ぎたとはいえ、大晦日まで開催中のクリスマスマーケット目当ての観光客は引きも切らない。ディナーに行った人気の老舗も予約客で満杯。スタッフは総出なのだろう、どの顔もキリッと締まり、息つく暇もない様子が伝わってくる。

そんな中での小さな給仕さん。預け先のなかったスタッフの子か、お店のオーナーの娘さんだろう、とオットも私も連れの者も思った。

ここで印象的なのはホール係のお姉さん。自分の仕事はきびきびと、しかも笑顔で確実にこなしながら、女の子の出来そうな作業を見つけては与える。少女は厨房にも着いていく。他のスタッフも上手によけながら気にも留めていない様子。

同年代の子を持つ客としては、お姉さんに脱帽。

女の子がどんなにかわいくても「この○○忙しい時にお荷物抱えちゃって・・・」と同情の気持ちでいっぱいになる。

そのうち、手一杯のお姉さんにデザートカードを渡され、少女は私たちのテーブルに注文をとりにきた。一人ひとりに「Qu'est-ce que tu veux? 何が欲しいの?」とたずねる声に楽しく答えながらも「覚えきれるだろうか」と不安がよぎるが「デザートメニューは暗記しているのだろう」と思い込むことにする。

お姉さんは後から確認しには来ない。女の子から報告を受け、遠くから「デザートは3つね?」と私たちに数だけ確認。

そう、実は、はじめから何よりも印象的なのは、ホール係のお姉さんの少女に対する信頼の与え方だ。私だったら、お客に出すコーヒーなど「こぼしたら大変」と絶対に任せられないだろう。注文だって、聞き間違えたり覚えきれないのでは、と不安になるだろう。

それが、おそらくある程度の失敗は想定のもと、はじめから「出来るだろう、出来るよね」と7歳児に信用を置いている。それが自然に伝わるから、少女も任された内容をとても誇らしく真剣にこなす。そして、彼女の達成感がこちらにまで伝わってくるのだ。一種の感動さえ覚える。

そして、それは起こるべくして起こった。

両手両腕に食器を目一杯重ねて歩き出そうとしたお姉さん。そこに「私にもやることない?」と少女が割り込んだため急停止。パリーン!グラスがひとつ少女の足元で割れた。

すると、奥のテーブルから女性が一人駆けてきて「大丈夫?マルゴ、もう終わりにしなさい、お姉さんも大変よ、あなたが割ったの?」。「ううん、私じゃない、私じゃないのママ、お姉さんなの。私じゃないの。」

そう、少女は食事に来ていたお客さんの子どもだった。大人より先に食べ終わって退屈していたのだろう。

コップが割れても、お姉さんはまず少女に怪我がないか確認し、責めることも叱ることもなく、あくまでもやさしく対応していた。

お姉さんは見るからに若く、子どもなどいないかもしれない。それでも、包み込むような寛容さがにじみ出ている。どんなに忙しくても心の余裕が感じられる。笑顔は接客用ではなく、彼女本来のものだとわかる。子育てで私に欠けている部分を見せつけられた思いだ。

天使が舞い降りそうなイルミネーションの街中で、紛れもなく、聖女に出会った。

STRISSEL:  5 place de la Grande Boucherie 67000 Strasbourg

Saturday, December 29, 2012

パラベン替りの防腐剤MITでアレルギー多発


パラベンに替わりコスメ用品などに広く使用されている防腐剤によるかぶれや湿疹が増えていると、フランス皮膚科学会(SFD、Société Française de Dermatologie)が発表した。12月19日のAFP通信が伝えている。

問題となっているのは Methylisothiazolinone(メチルイソチアゾリノン)という化学物質。

それまで主流であった防腐剤のパラベンParabenは、環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)の疑いがあるとして2011年よりフランスではその使用が禁止。

現在はメチルイソチアゾリノン(略記号MIT)が防腐剤として、ボディケア用品(ウェット・ティッシュ、石けん、シャンプー等)や家庭用洗剤(食器用洗剤、液体洗浄剤等)、業務用洗剤に広く使用されている。

「メチルイソチアゾリノンによるアレルギー症状が増えている。ほとんどが接触性の皮膚炎」と、フランス皮膚科学会役員のブリジット・ロワ=ジェフロワ医師は指摘する。

ナンシー国立大学病院の皮膚科・アレルギー科の責任者のアニック・バルボー教授によれば、皮膚炎は顔面に多く見られるが「メチルイソチアゾリノン入りの保湿クリームやボディソープを使用した場合にはもっと広い範囲にも症状は出る」。

さらに、市販のお尻拭きで赤ちゃんの臀部がかぶれるケースや「稀に呼吸困難の症状や粘膜の炎症も発生している」と教授は言う。

フランス皮膚科学会は、敏感肌の持ち主に対し、メチルイソチアゾリノンを示す「MIT」の成分表示に注意して商品を購入するよう勧告している。(France Info 12月19日付


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Friday, December 28, 2012

TNT地上デジタル無料放送に新顔6局


フランスのTNT(地上デジタル放送)は、12月12日より新たに 6局を無料で追加した。ル・モンド紙がまとめた各局の特色をご紹介。

Chérie 25 100%女性を対象としたNRJグループの新局で、路線は ‘‘ユーモアと無作法’’を狙う。シリーズ・ドキュメンタリー「Ma vie de femme」では女性犯罪者や妊婦などにマイクを向ける。映画放送も「マリー・アントワネット」や「ザ・クイーン」などのラインナップ。TVシリーズでは、第二次世界大戦中にカナダの弾薬工場で働く女性たちを描く「Bomb Girls」を放送予定。

RMC Découverte プログラムの8割は米ナショナルジオグラフィックやディスカバリー・チャンネル等から購入したフランス未放送の番組。テーマは日替わりで、冒険と動物、サイエンスとテクノロジー、歴史と探求、旅行と生活等々。スタン・リーの「スーパーヒューマン 現代の超人たち」、「トップ・ギア」、「Les nouveaux archéologues (BBC原題 National Treasures Live」などの放送が予定され、若者層を狙う。

6Ter M6グループ第3のチャンネルとなる6Terは総合的なプログラムを企画。「カールじいさんの空飛ぶ家」や「スラムドッグ$ミリオネア」などの大衆向け映画を週に2本。ドラマでは「Super Hero Family(原題No Ordinary Family)」や「Rasing Hope」など、家族をテーマとした米TVシリーズを揃える。

HD1 TF1グループからは映画、TVシリーズ、フィクション一色のHD1登場。TF1のパオリニ会長曰く、これらは「フランス人の好きなジャンルのベスト3」。プログラムの40%は未放送の番組で、年間約250本の映画を放送予定。週一晩はこだわりの芸術作品(art et essai)を厳選。唯一のマガジン番組「CLap」ではフィクションにまつわるニュースを扱う。

L'Equipe 21 試合の中継、結果やインタビューなど、スポーツファンには嬉しい約100種目に亘るスポーツに関する情報局。「Menu Sport」では、毎日スポーツを社会的・文化的・メディア的観点から分析。また、偉大なチャンピオンたちを描いたドキュメンタリー番組も。

Numéro 23 この局は、大衆向けに多様性について語ることにすべて賭ける。社会的多様性、身体的多様性、文化多様性など、あらゆる多様性が番組のテーマになる。ジャーナリストのクリストフ・オンドラットが司会をするトークショーでは、その日の社会テーマをめぐり各視点からの意見交換。歌とダンスは「XファクターUSA」と「アメリカズ・ ベスト・ ダンス・ クルー」のリアリティ番組におまかせ。


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Wednesday, December 26, 2012

プレゼント:今年はMade in France がよく売れた


政府が力を入れるメイド・イン・フランス促進の効果か?

生産再建大臣のアルノー・モントブール氏( Arnaud Montebourg)が、「フランス産」を売り込むために、ブルターニュのアルモール・ルクス社のマリニエール(横じまのバスクシャツ)姿で、ムリネックス社製のミキサーを手に、10月「ル・パリジャン・マガジン」の表紙を飾った話題も記憶に新しい。

26日発表されたアンケート結果によると、今年はフランスの消費者の55%が「フランス製」のクリスマス・プレゼントを購入したと、本日付France Info のサイトは伝える。

フランス製品の利点は「品質が高く、由来が明確。おまけに、国内雇用も促進する」というのが大方の意見。

男女別では、男性58%女性53%、年齢別では65歳以上のシニア層が77%がフランス製品を購入したほうがよいと回答、主に男性とお年寄りが「 Made in France」にこだわっているようだ。

一方、フランス製品の欠点だが、「価格が高い」が47%、「規格を設定するなどして製造に関する情報がもっと欲しい」が42%、「あまり市場に出回っていない」が36%。
 
また、回答者の3分の1近くの27%が、モントブール氏の提案する「Made in France」製品の売り場の創設を各店に望んでいる。


10月19日付Le Parisien Magazine誌の表紙でポーズを取るモントブール氏。
Medef(経営者団体)のマダム・パリゾをして「セクシー」と言わしめた。


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Monday, December 24, 2012

結核で絶体絶命の象、イブに救世主現る?


クリスマス効果か?

22日のブログ記事でも取り上げた、動物園で安楽死処置を待つ2頭の象。今日になって生き残りに向けて一筋の光が差し込んだようだ。

往年の大女優で動物愛護活動家のブリジット・バルドーさんが、24日、自ら運営する動物保護団体(FBB)で結核の疑いのある雌象たちを引き取ると申し出た。

本日24日付のLemonde.fr によれば、バルドーさんは、ローヌ県知事に宛てた公開書簡で「殺処分の命令の替わりに、ブリジット・バルドー財団(FBB)に預けるために象たちを差押える命令を新たに発する」よう、求めている。

象たちの病気が他の動物や一般人に感染しないよう隔離した上で、治療しながら尊厳ある最期を迎えられるよう保証するという。

ブリジット・バルドーさんだが、サーカスに対しても動物園に対してもたいそう憤慨していて、「人間の楽しみのために野生動物を奴隷のように扱う」サーカスと「野生動物を陳腐な囲いの中で見世物にし、絶滅の危機には無関心な」動物園はどっちもどっちと糾弾したと、21日付のパリ・マッチ誌のサイトは伝えている。

バルドーさんからしたら、見るに見かねて動いた、ということか。。。

果たして助け舟になるのか。命令は撤回されるのか。
きよしこの夜、象たちの運命はまだまだ不確かだ。


関連ブログ記事
リヨンの象救済、あの手この手でメディアを動員 (2013年1月7日)
結核の象2頭、安楽死の決定は覆る?(2012年12月22日)



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Sunday, December 23, 2012

Ni コペ ni フィヨン、フランス人は飽和状態


11月18日より続いていた国民運動連合(UMP、右派)の分裂危機は、12月17日にフィヨン氏とコペ氏が合意に至り、翌18日にはUMPの党執行部が合意内容を全会一致で承認。ひとまず収束を迎えたように見える。

ことの発端は11月18日のUMP党首選の結果。党幹事長コペ氏の僅差による勝利に対し、敗者である前首相のフィヨン氏が「待った」をかけた。

お互い選挙不正疑惑を持ち出して責め合い、ジュペ元外相やサルコジ前大統領などの党の重鎮が次々と仲裁に入るなど泥沼化。膠着状態が一ヶ月続いていたのだった。

合意によれば、来年9月に党首選をやり直し、それまではコペ氏が引き続き幹事長を勤める。党指導陣にはフィヨン派のメンバーも加わる予定。年明けには、国民議会で分離したフィヨン派の議員グループ(R-UMP)も元の鞘に収まることになる。

また、あらゆる法廷闘争を放棄することでも両者は同意。

コペ氏は戦闘態勢を整え、再チャレンジするとの見方が優勢。一方フィヨン氏は、再選挙への出馬について、18日夜に出演したFrance2のニュース番組で「まだ決断していない、政況に応じて判断したい」と明言を避けている。

さて、このドタバタ悲喜劇にひと月も付き合わされた一般国民の感情は?

21日、調査機関のBVAがI>Téléの依頼で行ったアンケート結果*によると、フランス人はもはやコペ氏もフィヨン氏も見捨てているようだ。

フィヨン氏の再出馬を望むのは回答者の35%で、コペ氏に至ってはその割合は20%でしかない。回答者を党の支持者に限った場合は、フィヨン氏の出馬を願うのは47%と若干増えるが、コペ氏に関してはその数値は28%に過ぎない。

「党首として誰がふさわしいか」という質問に対しては、元環境相のNKMことナタリー・コシュースコモリゼ氏がトップ人気で28%、次いで前農相のブリュノ・ルメール氏が25%、僅差でフィヨン氏が24%獲得。コペ氏は10%に過ぎなかったという。

党内バトルは思いのほか両者にダメージを与えたようだ。

*BVAが12月20日と21日に、18歳以上のフランス在住者を対象に電話およびインターネットで行った調査。

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Saturday, December 22, 2012

結核の象2頭、安楽死の決定は覆る?(リヨン)


パンデール・サーカス所有の2頭の象、ベビーとネパールはひとまず命拾いした。仏各紙によれば、結核を患う2頭は今週早々に安楽死の処置を受けるはずだった。
17日未明、ルフォル農業相の緊急介入により安楽死の決定は延期された。象は2頭とも42歳の雌象で、1999年よりリヨン市のテット・ドール動物園に預けられている。
パンデール・サーカスのジルベール・エデルシュタイン団長は、結核は投薬で治療できると主張し、安楽死を阻止すべく、14日にはオランド大統領に恩赦をも求めていた。
安楽死の決定は12月11日のローヌ県知事命令によるもの。結核は動物から人へ感染するため「動物を世話する人々に対する重大なリスク」が強調されている。一方、リヨン市役所は、「公衆衛生上の問題」を指摘。
県知事は「パンデール・サーカスの団長が望むならば行政裁判所に不服申し立てを行えるよう、決定を見送った」と発表。エデルシュタイン団長の申し立ては12月20日審理される予定。

と、ここまでが12月17日までの出来事。

12月20日に安楽死の中止を求めた申請がなされ、急速審理の結果、12月21日に注目の判決が出た。結果、エデルシュタイン団長の申し立ては棄却、安楽死の決定は維持されることに。

ここで意外なのが、この象たちは結核の「疑い」があるだけで診断が確定しているわけではない、ということ。

審理で原告側はそこを突っ込んだが判事の答えは「象が生きているうちは検査しても確実にシロとは判定できない。原告が求める検査は、感染の有無を知るためだけのもの。時間も掛かるし、検査をする人たちの命をいたずらに危険にさらすことになる」とし、国民の結核菌感染を防ぐという「公共の利益」を優先せざるを得ない、と結論づけた。

エデルシュタイン団長は直ちに判決の破棄申し立てを行う意向を示すとともに、大統領にも再度直訴するという。

ただ、破棄申し立て手続きは、今出ている判決内容の執行を中止させる効力はないので、その間、象たちはいつでも安楽死の処置を受け得る。21日付パリ・マッチ誌(サイト)によれば、その可能性の方が高いという。

そうはさせじと、サーカス団長はメディアを活用する構えだ。「ベビーをネパールを救え!」のインターネット署名はすでに1万1000人をサインを集めたと、ル・パリジャン紙は報告する。

象の運命やいかに・・・・。


・・・というニュースなのだが、個人的にはあまり心を打たれない。動物は嫌いではないし、この象たちにもサーカスにも恨みはないのだけれど。

やっぱりこの団長さんの言い分、やり方かなー。やたらとメディアを動員し、動物園はこんなにひどい仕打ちを~!預けたときは健康だったんだから、健康体で返せ~!やれ署名だ、直訴だ、、、と、パフォーマンスというかウソっぽく聞こえちゃって、なんだかなぁ。

サーカスの他のメス象とケンカしちゃうから動物園に「預かって!」って連れてきたのはサーカス側らしいし、要は「お払い箱」だったのでは。一生懸命世話してきたのは動物園なのに、その飼育員さんたちの健康や命も顧みずに「動物保護」の大儀名文をかざしているような気がして。

サーカスだけにそう感じちゃうのかなー。サーカスの動物はのびのびと自由に生きてるってイメージじゃないものね。まー、その点は動物園も同じだけれど。

あと、動物園の象の話といえば、昔読んだ忘れられない絵本「かわいそうなぞう」。涙無しでは読めないこの本。あの象たちは本当にかわいそうだった。健康なのに理不尽な状況下で殺されなければならないのだから。

絵本と違って、このケースではどうやら重病らしい。実際には毎日苦しんでいるかもしれない。そう思うと安楽死は愛情のある選択かもしれない、とも思うのである。

なんとも煮え切らない気持ちのするニュースだ。


関連ブログ記事
リヨンの象救済、あの手この手でメディアを動員 (2013年1月7日)
 結核で絶体絶命の象、イブに救世主現る? (2012年12月24日)


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Friday, December 21, 2012

第3世代ピルで身体障害、訴訟へ


先週のことであるが、気になった裁判のニュースがあった。

若い女性が、避妊用ピルを服用したため重度の障害を背負い、ピルを製造するバイエル薬品と 、販売を阻止しなかったとして国のANSM(AFSSAPSフランス保健製品衛生安全庁の後身)を相手取り、ボビニーの大審裁判所に訴えを起こした、とル・モンドのサイト(12月14日付記事)が伝えた。

原告はマリオン・ララさん、25歳。2006年、マリオンはMelianeというバイエル薬品の第3世代ピル服用4ヵ月後に脳梗塞を起こし、体の65%が麻痺する重度身体障害者となった。この脳血栓がピルに因るものであることは、2012年6月、ボルドーの地方医療事故損害調停委員会(CRCI)により確認されている。

各製薬会社は、第3第4世代ピルで血栓症リスクが高くなる事実は認識しているが、説明書に小さく記述することにより責任を免れているのが現状。

マリオンの場合、ピルと脳梗塞の関係がすぐに明らかになったわけではない。多くのピル被害者がそうであるように、病状とピルの因果関係にはすぐに気付かない。

2010年、ボーイフレンドが出来たマリオンは、再びピルを服用しようと新しい婦人科医を訪ねる。血液検査が行われ、そこで彼女は染色体に第II因子ライデン変異を持つことを知る。この因子は、血液の凝固反応を促進する。経口避妊薬の摂取は禁忌だ。

ピルと脳梗塞が結びついてから、マリオンは「一年間ほとんど眠れなかった。女性の8%がこの染色体異常を持っていると知ってから、今までにも死んだ女性がいるだろうし、これからも死ぬ女性がいるのだと悟った」という。それまで、マリオンはピルによる血栓症のリスクなど聞いたこともなかったし、家族は皆健康で、自分が染色体異常の持ち主であるなど夢にも思っていなかった。

ル・モンド紙は、マリオンのほかにも、ピルが原因で若くして亡くなったテオドラとアデールの家族の証言、肺塞栓を起こしながらも間一髪で助かったカロリーヌの証言を載せている。

ピルで障害者に?記事を読み始め、まずはこの意外性に打たれる。

フランスでは避妊用ピルはそれはそれは広く普及していて、一般的には「害のない」錠剤との認識があるからだ。害がないどころか、女性の身を守る、社会的に有益な良薬としての位置づけで、女性はティーンエイジャーの頃から当たり前のように服用している。

記憶が正しければ、思春期を描いた80年の映画「ラ・ブーム」で、ボーイフレンドの出来た13~14の娘に母親がピルを与えるような場面があったと思うが、要は、これがこの国のメンタリティー。

よって、女性の味方のピルが、健康な人間の命を奪うことがあるなんて、すぐにはピンとこないのだ。

でも考えてみれば、ホルモンの自然なリズムを騙くらかして排卵を操るために、得体の知れない添加物とともに四六時中、365日、何年も続けて飲み込み続けるのである。本当に体に何の影響もないのか、素朴な素人の疑問だ。

言っておくが、私はピル反対の立場ではない。女性が望まぬ妊娠を避けるための一手段として、研究開発が重ねられてきた経緯に関しては敬意を表している。1999年、日本で避妊目的の低容量ピルが解禁したときには(すでに日本にはいなかったが)「ようやく!」と心から喜んだものだ。

だけど、この国では、釈然としない何かがある。このモヤモヤが何処から来るのか、突きつめてみようと思う。

まずは、「ちゃんとした」女性は飲んでて当たり前、という風潮。

日本人女性は避妊目的でピルを服用してないのが「普通」だ。今の若い娘は知らないが、私の年代ではそう。それを知ると「あ~ら、先進国なのに女性はピルも飲んでないの?」と蔑んだような風潮が鼻につく。「あんたの国でだって、薬による避妊なんて、そう遠くない時代には考えられないことだっただろうがっ!」と思いっきりツッコミたくなる(実際言い返すけど)。でも、ま、それはピルに限らず、一事が万事そういう国だから置いとくとして・・・

私の気になるのは。

日本の女性で、フランス人男性とお付き合いすることになって、ピルを飲むよう言われた人も多いと思う。気に食わないのは、一般男性が女性にピルの服用を当然のように要求すること。

「避妊は二人の問題でしょ!今までピルに親しんでこなかった女性に対して『ピル飲め』って、よくも簡単に言ってくれるわねー。で、あんたは何を協力するの?ただ指図するだけ?ピルについて何の知識もないくせに」と、実際に言われた立場になったことがないので、感情移入でしかないけれど、こう大声で答えたくなる。

要は、男性の「ピルも飲んでないのかよ(めんどくせーなー、ちっ!)」という思考が透けて見えて、「ピル飲んでって言われた」って話を聞くたびに不愉快になるのだ。

つまり、一方的に女性だけが当然のように「負担」を強いられている現状。実際には仏女性の大半も「負担」だとは感じていないようなのだけど、それだけに、「負担」や「不安」に思う女性もいる、という想像力が働かなくなっている現状。これが一番アタマにくる。

と、話は逸れてしまったが、、、
そんなフランスでピルの弊害を訴えて訴訟に踏み切ったマリオンの勇気を讃えるとともに、他の薬害訴訟同様、困難が予想される裁判に向けて心から応援したいと思う。


ピル関連ブログ記事
Diane35、ピル騒動の中の抗にきび薬スキャンダル(2013年2月2日)
第3世代ピルは第2世代ピルに勝らない(2013年1月23日)
今度は「ピル・パニック」回避に懸命(2013年1月6日)
第3世代ピル、3月より払戻しに終止符(2013年1月4日)


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Sunday, December 16, 2012

ジェラール・ドパルデュー、仏国籍放棄?


フランスの大物俳優、ジェラール・ドパルデュー氏がお怒りだ。
16日、Journal du dimanche(JDD)紙は、氏がエロー首相に宛てた手紙を公開状として掲載した。

ことの発端は、12日、エロー首相がニュース番組で、ドパルデュー氏のベルギー移住について「税を逃れるために国境をまたいだところに住むのはかなり情けない(minable)」と発言したこと。

これに傷ついたドパルデュー氏が、沈黙を破って返信。書簡の全文は訳さないが、ル・モンド紙がまとめた記事から抜粋を:

「情けない、『情けない』と言いました?なんて情けないのでしょう」と、仏映画「おかしなドラマ」中の台詞をもじった文言で手紙は始まり、「パスポートと、一度も使わなかった国民健康保険を返上します。私たちの祖国はもはや同じではありません、父に教え込まれたように私は欧州人であり世界市民です」と続く。

さらに「認めて欲しいとは願いませんが、少なくとも尊重されてもいいのでは!」と投げかけ、自分は「今まできちんと税金を払ってきた」し、「14歳で印刷工、荷運び、そして役者として」働いてきた、と振り返る。

「2012年度、所得税の85%を支払った上で私はここを去ります。(中略)私をこのように評価するあなたはいったい誰ですか、オランド氏の首相であるエローさん、お尋ねします、あなたは誰なのですか?私は人を殺めたこともなければ非難されることをした覚えもない、45年間で1億4500万€の税金を払ってきたし、80人に職を与えている(中略)。同情される謂れもなければ褒めて欲しいとも思わないけど、『情けない』という表現はお断りする」と強調。

最後に「私の行き過ぎた部分、生きることへの渇望と愛を踏まえても、私は自由な存在であり、エローさん、私は礼儀正しくありつづける」と芝居がかった調子で締めくくっている。

首相VS大物俳優の対決となればメディア受けは必至で、朝から各ニュースTVは米ニュータウンの惨事そっちのけでこの話題で持ちきり。公開状に対する政界、芸能界からの反応も次々に放送。

しかし、なんだかなー。どっちもどっちだな。ドパルデュー氏、「情けない」などと形容されて面白くないのは分かるけど、文面には「外国に移住する金持ちは私だけじゃないのに、、、」のようなくだりもあり、何だか子どもじみている。

自分の行動に後ろめたさがなければ、なんと言われようと、黙々と堂々としていればいいのに。所詮、政治家の国民に対する政治発言であって、個人攻撃と受取らずに聞き流せばいいのにな、と思う。

しかも、国籍を叩き返すなんて、反響狙いだろうけど、結局言葉だけで実際には無理だろうし、そういうところもお気楽というか。

また、この公開状に対する反応として与党(左派)の大臣らが次々にインタビューを受け、役者としての才能を讃えながらも「国が苦しいときに協力的でない」と残念がったり、他の芸能人からは「パトリオット(愛国者)ではない」と指摘されたり、それも何だかすっきりしない。

基本的に人間は自由であって、公人でも軍人でもないのに、愛国心だの、国への忠誠心だのを持ち出して、人一人の行動を非難する発言はちょっと怖い気がする。

国の税政策があって、それに対する一個人の行動があって。有名人だから行動が公になるのは仕方ないとして、あとは、その行動をどう捉えるか、その行動によってその人の評価を上げるか下げるか、どうでもいいと無視するかは、結局、各自で決めればいいことである。

こんなことでメディアが大騒ぎになるなんて、ほんと、それこそ「情けない」。

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Friday, December 14, 2012

本当に華麗な「アンナ・カレーニナ」!


5日に公開された『アンナ・カレーニナ』を見てきた。ラジオで封切りを聞き、絶対に行きたいと思っていた映画だ。

古いといわれようが、私はロマン大作が好き。特に、終り方がやりきれないロシアものは良い。トルストイさま。どんな仕上がりなのだろうと、わくわくしながら映画館に向かった。

わざとではないけれど、今回はめずらしく新聞・雑誌の批評を事前に読まずに行った。ラジオも聞き流しだったため監督や役者が誰であるのか、その場でわかることになったのだが、、、、

嬉しい発見その1。ヒロインのアンナ役がイギリス女優のキーラ・ナイトレイだった。彼女には以前、飛行機の中で会った。というのは半分ウソで、実際は、成田・パリ便の座席の前の小さな画面で初めて、映画『プライドと偏見』でヒロインを演じていた彼女に会った。とても印象に残っていたこの美しい女優さんが再びヒロインだということで、楽しみが倍増した。

嬉しい発見その2。映画監督が ↑ の『プライドと偏見』(ジェーン・オースティン原作)を手がけたジョー・ライトだった。

さて、映画が始まり、、、

いや~、驚きました。始めに劇場の舞台がいきなり出てきて舞台上でお話の演技が始まり、、、。さすがに最初だけでしょう、と思っていたら、お話すべてがほぼ舞台セットの中(?といっても大幅にはみ出すのだが)だった。

知らないで行っただけに戸惑う。役作りも、故意に、すべてが芝居がかっているし、メイクも衣装も誇張されているし、背景のセットはバッタバタ変わるしで落ち着かない。

おっかしいな、こんなにアバンギャルドな監督だっけ?私は映画を見に来たのよ~、お芝居じゃないのよ~、早く「標準」に戻って~~~!と始めの10分間は祈っていたのだが。。。

慣れる。というか、美しい。衣装も、役者も、振り付けも、セットも。始めは鼻についた人工的な要素も、要は抽象の目を持って見ればストーリーにぴったり合っているし、違和感がすっとなくなるどころか、むしろ心地良い。

アンナの愛人ヴロンスキーも、ジャン・ポール・ゴルチェの香水のCMからそのまま出てきたのでは?とびっくりな風貌だが、それでも、役にぴったり嵌まってくるから、あら不思議。

さてさて、肝心のストーリー。アンナの劇的な運命も、若かりし頃に本で読んだときと変わらず、満足だったのだが、子を産み年数を重ねた今、心に響くところがやはり違うなぁ。

私の長男とたいして歳も変わらなそうなアンナの息子。アンナの、息子に対する愛。母に置き去りにされた子の寂しさ。アンナの、身をちぎられるであろう悲しみ、迷い、葛藤。

妊娠を避けられない当時の女の運命。そして強さ。

愛の形。誠実な愛、忠実な愛、理性の愛、情熱の愛、真の愛、拘束の愛。どれが本物でどれが間違っているのか。もちろん、映画の中には正解もなければ道徳の押し付けもない。

華麗、感動、オリジナル、の3拍子揃って、大満足のひと時でした。

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Thursday, December 13, 2012

すこしずつ・・・



ブログをお休みしている間に時は移ろい...
その間フランスでは政権も変わり、ロンドン5輪も過ぎ去り、アクテュもずいぶんと様変わりしてきました。

このブログも少しずつ復活していけたらいいな、って思っています。